2017年4月14日金曜日

「女房を『現地調達』した」と発言して恥ずかしいとも思わない新聞記者

- ジャーナリストも「反知性主義」の、劣悪な日本のこの知的状況 


去る3月24日、広島市内で「新しい韓日関係と未来ビジョン」と題するシンポジウムが開かれました。「慰安婦」問題についても議論があるとのことでしたので、日本軍「慰安婦」問題解決ひろしまネットワークからもメンバーが2名ほど参加して傍聴しました。しかし、登壇者の一人、産経新聞ソウル駐在特別記者兼論説委員である黒田勝弘の発言内容があまりにも低劣で、女性蔑視だけではなく、歴史に関する無知もはなはだしい内容であったので、私たち日本軍「慰安婦」問題解決ひろしまネットワークは、彼を登壇者として招いたシンポジウムの主催団体に下記のような公開質問状を出しました。

つい数日前のブログで日本の首相や閣僚たちの「反知性主義」について批判しましたが、世論に知的刺激を与える社会的任務を負っているはずのジャーナリストの中にも、あまりにも野卑で無知な「反知性主義者」がいることに、本当に情けなくなります。


財団法人世宗研究所様
韓国国際交流財団様
広島市立大学広島平和研究所様
駐広島大韓民国総領事館様

公 開 質 問 状

  私たち日本軍「慰安婦」問題解決ひろしまネットワークは、日本軍「慰安婦」の被害に遭われた方々の名誉と尊厳が回復されることを願い、また、被害者たちの「二度と私たちがしたような残虐な体験を誰にもさせてはならない」という願いに共感してこの広島の地で問題の解決に取組んでいる市民です。
  先日は「新しい韓日関係と未来ビジョン」をテーマとする日韓関係シンポジウムにご案内いただき有難うございました。日本軍「慰安婦」問題の早期解決を願って活動している者として、日韓間の中心的な懸案としてあげられた日本軍「慰安婦」問題と「竹島/独島」という領土問題について日本政府が駐韓大使及び在釡山総領事を召喚中というこの時期に韓国の重要な知識人の方々と日本のジャーナリストがどのようなお話をされるのか、強い関心を持って参加いたしました。
  基調演説および1部の発表に関しては幾つか新しい知見を与えられ学びを深めることができました。しかしながら、第2部のラウンドテーブルと称する討論において聞き捨てならない発言を聞き、事務局で協議の上、この文を差し上げることにいたしました。その発言とは、黒田勝弘氏が自己紹介でご自分と広島とのつながりを話される場面で「女房も『現地調達』した」と発言されたことです。
  その発言を聞いた途端、「これはひどい」と思いました。「自分の配偶者(そして女性一般)をモノ(道具)扱いにした」発言だと受け取りました。この言葉は、日本軍が侵略戦争中に戦略上の必要から、食糧及び「慰安婦(=性奴隷)」を「現地調達=略奪/強制連行」した行為を指しています。そしてその過程でしばしば住民殺害が起こり女性に対しては性暴力が振るわれました。いわゆる「慰安婦」と呼ばれた女性たちは、当時日本の植民地であった韓国や台湾からアジア太平洋地域に送りこまれた女性たちだけではありません。中国、フィリピン、インドネシア、マレーシア、東ティモール、ニューギニアや南太平洋の島々の多くの女性たちが、文字通り『現地調達』されて日本軍によって各地に設置された「慰安所」に連行され、日本軍兵士たちの性奴隷として、自由を奪われ性の相手を強要され、反抗すると軍刀等も使った暴力を受けるという、言語に絶する苦しい経験を長期間にわたって強制されたことを考えてみてください。こうした事実に思いを馳せるならば、冗談にも「妻を現地調達した」などという表現をすることが、いかに女性の人権を無視しているのか、その発言者の恥ずべき女性観を明らかにしていると思います。
  戦後日本がアジアに経済進出をしていく中で、また観光旅行の行く先々で女性を自分の性欲のはけ口として扱い、「現地妻」や「買春観光」という言葉も生まれましたが、女性・女性の性が道具として扱われていることを示すものです。特に「慰安婦」問題が討論の一つになる席での発言として、人権意識、女性の人権に対する認識のなさを披瀝したものではないでしょうか。
  国連の女性差別撤廃条約が発効し、1995年北京で開催された世界女性会議で「女性の権利は人権です」と明言され、女性の人間としての権利の確立と女性に対する暴力や差別の撤廃に努力している国際社会だからこそ、今なお日本軍「慰安婦」問題のまっとうな解決が世界から求められ、「平和の碑」の建設が続いているのです。そのことを直視できないでいる日本社会の現実の一端が今回の発言に如実に現れたのではないでしょうか。
  シンポジウムの登壇者が全て男性であることにもともと問題性を感じていましたが、「現地調達」という表現を使った黒田氏に苦言を呈する人が一人もいなかったことに私たちは強い憤りの念を禁じえません。黒田氏はどのような考えでこの言葉を使われたのでしょうか。このシンポジウムを主催された貴団体に、その後どのような対応をされたのかお伺いしたいと存じます。
  また、広島での開催ということで当然のことながら、原爆被爆の問題、特に在韓被爆者への援護の問題が話題に上がりました。もともと日本政府は被爆者援護制度に条件をつけ、国外在住者を援護策から排除しました。在韓/在外被爆者が勝ち得た援護策は被爆者自身のたゆまぬ努力があってこそ実現したにもかかわらず、ここでも黒田氏は、「日本政府からの支援があって被爆者手帳を持っている」と言い、日本政府や日本人、広島からの支援を陜川で計画中の資料館に明記して残すように要求しました。「被爆者はどこにいても被爆者」という名言は裁判を闘われた郭貴勲さんの言葉です。日本による朝鮮半島の植民地支配という歴史を捨象したままの日韓間の課題に関する討論は、砂上の楼閣を論ずるようなもので未来のビジョンを指し示そうという目的達成には程遠いと思います。講師選任に大きな問題があったのではないかと存じますが主催団体としてはどのような見解をお持ちでしょうか。

  非常に有意義な企画であるだけに多くを期待しすぎたのかもしれませんが、今後も引き続き各所で開催されることでもあり、以上申し上げた事柄に関しまして、4月中にご返答・ご見解を賜りますようにお願い申し上げます。
2017410
日本軍「慰安婦」問題解決ひろしまネットワーク
共同代表 足立修一 田中利幸 土井桂子
連絡先住所:730-0036 広島市中区袋町6-36
合人社ウェンテディひと・まちプラザフリースペース気付メールボックス132 FAX:082-923-6318(土井)

追記: この質問状の写しを登壇された方々の所属先にも送らせていただきます。
賛同団体
教科書問題を考える市民ネットワーク・ひろしま
第九条の会ヒロシマ
ピースリンク広島・呉・岩国

Little Hands
日本基督教団西中国教区性差別問題特別委員会



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